仮面ライダー


それは絶対無敵を顕す、完全正義の証。

仮面ライダーキングビートル。
正義の礎となって消えた、あらゆる実験体、失敗作の成果であり、すべてのライダーの頂点に立つべく生み出された帝王。
赤いマフラーは正義の証。
なびくマントは覇王の印。
その名は正義の味方。
正当なるライダーの後継者としてライダー部隊を率いる男である。
新米警官だった彼は、怪人との戦いで一度、命を落とす。
しかし、ライダー改造技術の発達で半改造人間として復活する。
このことを誰よりも早く、共に戦った敬愛する先輩に知らせようとしたが、その男の行方はつかめなかった。
彼の死に責任を感じて辞職した、と彼は聞かされた。
しかし、誰よりも正義に燃え、弱者のために戦うことを心情としていた先輩である。
正義のために戦い続ければ、いつかは会えると信じていた。
なぜなら、共に平和を守ると誓い合った仲間だから。
彼は自分を復活させた研究所の推薦もあって、ライダー部隊に入隊した。
誰よりも弱者をいたわり、熱く正義に燃え、理不尽な悪を憎悪する。
そんな彼が実力、功績ともにライダー部隊の頂点に上り詰めるのに、長い時間はかからなかった。
戦闘経験の蓄積と、彼に合わせた指向性のカスタマイズを重ねた結果、名実共に彼は最強のライダーとなる。
そんな彼の前に、あの連中が立ちはだかったのだ。
仮面ライダー骸。
出来損ないの集団。
彼らは悪の怪人たちと戦いながら、正義のライダーとも敵対する。
それが彼には理解できなかった。
平和を破壊し、自分たちの思うがままに社会を支配し、弱者を虐げようとする秘密組織と、一緒に戦う仲間のはずだ。
ライダーとはそういう存在だと、彼は信じて疑わない。
だが、骸を率いているコクローチ。
彼こそが行方知れずとなった先輩だと知ったとき。
彼が自分を救うために受けた仕打ちを知ったとき。
覇王の正義は真菌(カビ)の根が広がるように、じわじわと崩壊を始める。
正義の組織だと信じて疑わなかったライダー部隊。
その裏で行われていた非人道的な実験。
骸との戦闘を重ねるたびに彼の中で背反する感情が膨れ上がる。
骸のアジト襲撃時には、彼は何もすることなく、ただ傍観していることしかできなかった。
無念という無念を貌に刻み込んだセンチピード(人間体)の死体を前に、自分はこんなことのために戦ってきたのかと自問し続ける。
そしてライダー部隊が国によって、金で他国に売り渡されたとき、彼はライダー部隊からの離脱を決意する。
裏切り者と断ぜられた彼は、かつての仲間と戦いながら骸に合流するために走る。
たとえどんな組織だろうと、いままで共に戦ってきた仲間であり、今も目的を同じとする同志たちである。
彼は決して命を奪うようなマネはせず、手加減して戦い続けた。
そのために、自分の身体がいくら傷つこうとも。
瀕死の重傷を負いながらも、彼は骸を――コクローチを求めてさまよい続けた。
そしてとうとう骸のメンバーと出会う。
だが、その相手は骸から孤立し始めたウェルミだった。
ウェルミはセンチピードや娘の死の責任を負わされ、粛清を恐れてただ焦っていた。
ライダー部隊の隊長を殺して、手柄を立てるために彼を攻撃する。
なぜ、自分がこうも一方的に攻撃されるのか。
敵ではないといくら叫んでも、相手はまったく耳を貸さない。
これが今まで彼らと敵対してきた罰なのか。
コクローチの名前をか細く何度も呟きながら、彼は死んだ。
その死体は嬉々としたウェルミによってコクローチの前に届けられる。
そんなウェルミに与えられた褒美は、顔面への容赦ない鉄拳だった。
かつて自分の命を差し出して救った命である。
コクローチの怒りと無念は底知れず、計り知れなかった。
こうしてウェルミは骸から完全に追放される。
その後、キングビートルの死体はコクローチによって手厚く葬られる。
だが、人知れずその墓は暴かれる。
誰あろう、怪人を生み出す秘密組織の手によってである。
最強のライダーの肉体は、最強の怪人を生み出すための素材として最適と思われたのだ。
そして再び彼は骸と対峙することになる。
最後の怪人として。


こんな所です。
あと二回ほどお付き合いください。