仮面ライダー
骸のメンバーの中で最強の戦闘力を誇り、もっとも敵を倒している男。

仮面ライダーセンチピード。
毒物への耐久度検査実験と言う、もっとも過酷な実験を生き抜いた男である。
毒の耐性を得ていたため、猛毒を扱う怪人ムカデ男と融合し、その能力を得た。
全身を流れる血は猛毒、噛み付く牙には猛毒、触手状の爪から放たれるのも、また猛毒である。
擦過傷が致命傷に至る彼の攻撃の前に、ライダーも怪人もなすすべもなく倒されていく。
毒耐性を持っていても、いたるところから生え、いくらでも伸ばせる触手による攻撃は防ぎがたい。そして触手で捉えた後、もっとも強靭な顎で相手の喉笛を噛み砕くのだ。
まさに全身凶器である。
彼はもともと暴走族チームMUKUROの頭だった。
骸の命名も、彼が提案したものである。
速度超過と無免許運転
補導はされたが、こちらは未成年。すぐに帰れるものと思っていた彼を待っていたのは、改造手術と猛毒による実験だった。
なぜ、自分がこんな目に合わなければならないのか、理不尽な虐待の前に彼は怒りの咆哮を上げ続けた。
骸のメンバーと一緒に研究所を脱出した後、彼は執拗に自分をあんな目にあわせた研究者たちを追い詰めた。
そしてとうとう、逮捕あるいは補導した暴走族を実験体として使うよう命令を下した政治家を突き止めたのだ。
彼は迷うことなく張本人の家まで押しかけ、警備の人間を殺し、寝室で眠っていた政治家を殴り、蹴り、得意の猛毒で拷問する。
すべての復讐の意味をこめて。
しかし、そこで彼が知った事実は、彼の中の何かを打ち砕いた。
そもそもは政治家の幼い娘が、バイクの暴走行為に巻き込まれて事故にあったために、父親が復讐の慙愧に駆られて出した命令だったのだ。
もちろん、彼が事故を引き起こしたわけではない。
だが、そうなってもおかしくはなかった。
父親を心配した娘が、閉ざされた父親の部屋に押しかけてくる。
彼は部屋へとやってきた娘の姿を見て、全身の力が失われるのを感じた。
片足は骨が粉々に砕かれ、コルセットで固定されて二度と動かず、もう片方は無残に切断されていた。
松葉杖を取り落とし、地面に這い蹲りながら娘は悲鳴を上げる。
父親は娘の助命を叫びながら悶死した。
娘が恐怖で失神するまで、彼は指先一つ動かすことができなかった。
それ以降、彼はアパートの一室に足の不自由な娘を住まわせている。
メンバーの反応は様々だったが、文句を言うものは誰もいなかった。
最初はふさぎこんでいた娘だったが、彼の献身的な介護によってやがては笑顔を見せるようになる。
自分のしてきたことの報いを知ったこと、そして守るべき対象を得たことから、次第に剣のあった彼の態度は軟化し始める。
「俺が父親を殺した。だからいつかお前は俺を殺せ」
それでも彼は口癖のように娘に言い聞かせていた。
幼い少女に、その意味がどこまで通じているのかは解らない。
親しくなりすぎてはいけない。彼の思惑とは裏腹に、二人の絆は深まっていく。
実の親子のように。
ある時、メンバーのミスで骸のアジト(コクローチの経営するアパート)の位置がライダー部隊と怪人の双方に知れ渡る。
示し合わせたように総攻撃を仕掛けるライダー部隊と怪人たち。
アパートの放棄がコクローチによって命じられたが、足の悪い娘をかばいながら戦うわけにも行かず、彼はアパートに立てこもる。
抱きかかえて逃げられればいいのだが、全身から猛毒を垂れ流すライダーフォームではとても無理だ。
百を超えるライダーと怪人たちを撃退しながら、彼には限界が近づいていた。
「俺はあいつに、殺されてやらなきゃ」
そう言って、彼は娘の目の前で死んだ。
都合、二度父親の死を目の前にした娘は精神疾患を患い、まもなく後を追うように死んだ。
これを機に、骸はチームとしてほころびを見せ始める。


こんな感じ。